王朝和歌『古今集・新古今集』をモチーフにして |
楽曲 「天女」『古今集・雑上』より |
この曲は古今集の次の和歌を本歌にして、本歌取りの手法に習い、自分なりに試みて作った歌です。 天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ 「現代語訳」 天空を吹く風よ、雲の間の通り道を、吹き閉ざしておくれ (天の)舞姫の姿を、もうしばらく、この地上にひき止めておきたいから |
出典 「古今集・雑上」 作者 僧正遍昭 |
平安時代、宮中の節会の儀式で五節の舞(ごせちのまい)が行われ、そこで舞っていた、舞姫の姿と天女とが、二重写しになってこの作者の目には映ったのでしょう。六歌仙の一人である作者・遍昭。のびのびと、そして軽やかに歌い上げています。 美しい舞姫から天女を連想し、この舞姫たちは舞い終わるとまた天上へ帰るかもしれない。もうしばらく地上において眺めていたい。そこで、どうか天への道を閉ざしておくれ。と風に呼びかけて詠ん(よん)だのです。 花やかで優美、生き生きとしたリズム、加えて幻想的な内容は王朝和歌の華麗で、みやびな世界を見事に見せています。 私は大学生の時、エルヴィスのファンクラブに行くようになりました。 そのファンクラブの中に、私の想像する天女のイメージぴったりの女の子がいました。当然のことながら、ひとめボレです。思い切って一言、二言は話したものの、ドキドキして後が続きません。心は空回りするばかりでした。しかし、そのファンクラブはいつしか自然消滅してしまい、私は別のファンクラブに行くようになりました。そのファンクラブの中でエルヴィスのコピーをして、ステージに立つようになったのですが、そこにその彼女の姿はありませんでした。この和歌の作者が舞姫と天女を二重写しにして、作った手法に習い、この曲も私の想いの届かなかったその彼女と天女を二重写しにして、作った歌です。そういうわけで、百人一首にも選ばれている古今集のこの和歌と共にこの楽曲をより多くの方に聴いて頂きたいと思います。 |
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−参考− 本歌取り:先人の名歌(本歌)をもとにして、その本歌の成句を生かして、 新しく歌を作る技法をいう。 五節の舞:平安時代、宮中で行われた節会の儀式の中で雅楽(ががく)に 合わせて、数人の少女たちが舞うイベント。 六歌仙(ろっかせん):平安朝初期を代表する、六人のすぐれた歌人。 ・在原業平・小野小町・僧正遍昭・文屋康秀・大伴黒主・喜撰法師 |
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